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千葉家庭裁判所 昭和44年(少ハ)5号 決定 1969年5月13日

少年 TY(昭二四・一〇・二八生)

主文

本件申請を棄却する。

理由

一、小田原少年院長の本件申請の要旨

本人は、昭和四三年四月二五日千葉家庭裁判所において、暴力行為等処罰に関する法律違反、銃砲刀剣類所持等取締法違反、恐喝、監禁保護事件により特別少年院送致の決定を受け、同年五月一日小田原少年院に収容された者であるが、その後順次進級し、昭和四四年二月一日最高段階の一級上に達し、院内の処遇経過に照して保護観察に付することにより本人の更生が期待できると判断されるので、同年五月二六日を希望日として仮退院の申請をしているところである。しかし、本人の更生にとつて不可欠と考えられる不良交友との絶縁を図り、本人の健全な社会復帰を期するには、仮退院後もなお長期にわたる保護観察を実施する必要があると思料されるところ、このまま仮退院が許可されると、同年一〇月二七日をもつて仮退院期間が満了し、保護観察は五か月間で終了することになるから、昭和四五年五月二七日までの収容継続決定を申請する。

二、当裁判所の判断

少年調査記録、家庭裁判所調査官の本件についての調査報告書四通、本件申請書添付の理由書を綜合すると、次の(一)ないし(四)の事実が認められる。

(一)  本人は、小田原少年院入院後当初の頃は、知能程度が低い(限界域)せいもあつて院内の生活に適応できず、生活、教育両面にわたつて落着きを欠き、しばしば注意を受けていたが、約二か月を経た頃から次第に好転しはじめ、その後は普通の成績を保ちながら順次進級し、昭和四四年二月一日最高処遇段階の一級上に達し、その間反則事故も別になく、同月七日から従事することとなつた調理作業には骨身を惜しまず働き、持続性も認められるようになり、生活態度も安定してきたので、同少年院では仮退院を相当と認め、同年五月二六日を希望日として地方更生保護委員会に仮退院の申請をしている。

(二)  しかし、少年院収容前本人に見られた自己顕示性、雷同性、不良集団への志向傾向は、院内における教育によつて矯正されつつあるとはいえ、その効果はいまだ必ずしも充分ではなく、とくにヤクザ的気分はなお残存しているように思われる。

(三)  本人は、仮退院後は本籍地に帰り、工員をしている継父のもとで工員として稼働する予定であり、同人は本人の受入に積極的で、実母とともに本人の出院を待望んでおり、家庭の受入態勢には支障はない。

(四)  本人には不良集団を背景とした粗暴犯的傾向があつたので、本人の順調な社会復帰を期するには、日常生活のうえで、不良集団との交流を絶ち、右傾向を除去することが緊要であるが、本人の気質面にヤクザ的気分がなお残存し、本人がかつて交際していた不良集団のうち若干名が千葉県茂原市内に居住しており、現在少年院に収容されている者も遠からず出院が予想される状況にあることを考えると、本人が出院後の環境の変化により再び不良交友をはじめ、従前のような退廃的生活態度に戻り、再非行に陥る危険がないとはいえない。

したがつて、本人に対しては、仮退院後もなお保護観察を実施する必要があるといわなければならない。

本人には、申請どおり仮退院が許可されると、少年院法一一条一項本文により、同年一〇月二七日まで五か月間の保護観察期間がある。そこで、その期間をさらに延長する必要があるかどうか検討するに、前記各資料によると、本人は同年四月一日から院外作業に従事しているが、出院が近づくにつれて自覚と反省を深め、出院後は従前の非行グループから誘惑があつてもこれに加わらず、前記のとおり継父のもとでまじめに働く決意をしていて、更生意欲、勤労意欲が窺われるのみならず、双方の親族の了解のもとに、以前同棲していた加○和○と結婚する意思を固め、出院を機に再非行に陥らないよう努力する旨誓つているので、五か月の保護観察期間中に、本人に対し、その生活態度を観察しながら適切な指導監督をすることにより、本人の犯罪的傾向はほぼ矯正できると思料されること、本人がかつて出入りしていた暴力団○○会はすでに解散となり、茂原市内に居住している元組員も分散し、それぞれ一応の正業に就いており、出院が予想される共犯者らも院内の教育によりその犯罪的傾向は相当矯正されていると思われること、継父は本人が成人に達した後の保護観察を希望していないことなどをあわせ考えると、本人に対しては、出院後五か月間で保護観察を打切るについては多少の不安がないではないが、さりとて、その期間をさらに延長しなければならない積極的理由を見い出すこともできない。満二〇歳に達した後は、成人としての本人の責任と自覚のもとに社会人として生活させ、その自立的更生を期待するのが妥当であると考える。

三、以上の次第で、本人については、仮退院後の保護観察期間を延長するため収容継続をすべき理由はないと認められるので、本件申請を棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判官 川口春利)

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